まん延防止措置が解除されて間もなく1ヶ月。措置期間中はクローズしていたお店や公共施設も再開し始め、街中も少しづつ人が増えはじめています。そんな中、メディアで話題なのが、上野動物園のパンダの赤ちゃん達。「シャオシャオ」と「レイレイ」に会うには何十倍もの倍率の抽選を潜り抜けた人たちのみだそうで、再開開始時点での倍率は38倍だったとか。赤ちゃんパンダの双子たちに会えるには、運を味方につける必要があるようです。
すっかりパンダが話題の中心となってる上野動物園ですが、実はタイの王族と関わりがあり、コロナ禍にも関わらず開園以来初めて繁殖を成功させた動物がいるのです。
そこで今回は、いつもとは少し趣きを変えて、タイの王族とゆかりの深いある動物についてご紹介します。これを読み終わるころには、上野動物園に行きたくなるかもしれませんよ。
-目次-
・知ってた?タイ王室と日本の皇室との親密な関係
上野動物園が開園したのは1885年。4年後には宮内省の管理になり、さらにその2年後の1888年にシャム(現在のタイ王国)の皇帝から皇室へ贈られたゾウを賜ったことから始まります。
その後、上皇ご夫妻が皇太子時代の1964年にご夫妻のタイ訪問を記念してアジアゾウを、そして、2002年には天皇ご夫妻の長女であられる愛子さまの誕生を記念して、雄と雌の子ゾウが1頭ずつ寄贈されています。寄贈されたカップルのゾウの間には、2020年になって、上野動物園開業以来初の赤ちゃんゾウが誕生!コロナ禍であまり話題にならなかったのが残念ですが、今もすくすく育ってかわいい姿を見せてくれているんですよ。
出典:東京ズーネット:https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=ueno&link_num=26759
タイ王室と日本の皇室は親密な関係が続いており、王室にとってはもちろん、タイ国民にとっても「タイで一番すばらしい贈り物」であるゾウを何度となく寄贈していただいているのです。
・ゾウがタイで一番素晴らしい贈り物ってどういうこと?
では、何故タイではゾウが「一番素晴らしい贈り物」とされているのでしょうか?
まずは、ブッタの誕生の時代まで話をさかのぼりましょう。
長らく子宝に恵まれなかったブッダの生母マーヤー(摩耶)夫人が、ある日、天から白い象が降りてきて、自分の右わきから胎内に入る夢を見て懐妊しました。それから、仏教では白い象をブッタの化身として崇めるようになりました。涅槃図などにも白い象が登場するほどで、オバジ仏教国である日本でも寺院などの彫刻に霊獣として登場しています。
熱心な仏教国であるタイにおいては、「世界中の人々を救う偉大な王子が生まれる」事を知らせてくれた象を神聖化し、尊敬の対象として大切に扱ってきました。特に白い象は釈迦の化身として崇められています。
ゾウに対する尊敬の念は、宗教的な意味合いだけではおさまりません。スコータイ王朝やアユタヤ王朝の時代には、ゾウは戦争に欠かせない生き物として、共に戦火を潜り抜けました。
そのため、ラーマ5世の時代である1873年から1910年にの間使われていたいた国章には、タイの国王の王権を象徴するレガリア「五種の神器」のひとつ、金色に輝く大きな王冠「プラマハーピチャイモンクット」とともに、白い象が描かれていました。
ゾウは、「王を守り、先頭を切って戦う、勇気と誇りの象徴」でもあり、この国章は現在もタイ警察や軍の大学の象徴として使用されています。さらに、1916年まで使用されていたタイ国旗にも白い象が描かれていたほど、タイ王室にとっても国民にとっても、ゾウは特別な存在なんですね。
また、タイでは治世中に白象を得た国王は、高い人徳の持ち主・名君として国民から慕われるとされていて、身体の一部が一定の白さを持つ「白象」が見つかれば、すべて国王に献上することになっていることが法律で定められているんですよ。
・ロイヤルエレファントってどんなゾウ?
このように、タイ王室と縁の深いゾウですが、タイ仏教の頂点である国王には、代々専属の「ロイヤルエレファント」が存在します。とはいえ、全てのゾウが「ロイヤルエレファント」になれるわけではありません。白さについてだけでなく、寝相がよく、たち振る舞いが上品であることなど、様々な条件が求められます。まさに、選ばれしゾウだけが一世一代の国王専属のゾウとして崇められるのです。
新国王が即位すると、まずはゾウが住む森の中に入り、これから一生を共にするゾウを探します。ゾウは賢くて気が荒い動物なので、簡単に気を許すことはありません。その中から、ロイヤルエレファントにふさわしい気品と品格を持ったゾウを選び出すのが国王の仕事となります。
多くのタイ国民に愛されていた前国王ラーマ9世の場合、ロイヤルエレファントとの出会いはとても神秘的であると言い伝えられています。即位を終え、森へと進んだプラーマ9世は、姿が大きく、気品あふれるゾウと出会いました。しかし、そのゾウは気性が荒く、人が近寄ることができないほどの状態でしたが、前国王陛下が近づくと膝をつき、服従のしぐさを見せたと伝えられています。
その後、ロイヤルエレファントとして国王の専属となり、ラーマ9世が崩御した後は、次の国王に引き継がれることはなく、静かに余生を過ごすそうです。ちなみにラーマ9世には7頭の白象を側に置いていたとか。ロイヤルエレファントは一般公開されるケースは少なく、戴冠式や、特別な行事の時だけに登場します。
・ロイヤルエレファントに会うには?
現役のロイヤルエレファントに会う機会は希少ですが、気になる方におすすめなのが、タイでも有数の観光地であるアユタヤにある「ロイヤル・エレファントクラール&パビリオン」。アユタヤ時代に王室用に飼育されていた象の囲いと専属の象使いの館を再現しており、タイ王室とゾウの特別な関係を見ることができますよ。
・タイ王室ゆかりのゾウに会いに行きませんか?
王様だけでなく庶民からも信仰の対象であり、とても身近な動物であるゾウ。タイの人々のゾウへの思いは強く、世界で唯一の象専門病院もあるほど。病院内には保護センターや、敷地内には象のショーを見学するゾーンや、象使いのトレーニングセンターなどが併設されていて、ゾウとの共存をめざしています。こんなに大切にされているなんて、ゾウ冥利?に尽きるかもしれませんね。
まだまだ気軽に海外旅行をすることはできませんが、お休みの際には上野動物公園の「ゾウの森」で、タイ王室にゆかりのあるゾウを見て心を和ませてみてはいかがでしょうか?まだまだかわいい盛りの赤ちゃんゾウ「アルン」の姿を見ながらタイに思いをはせるのもおすすめですよ。