アバイブーベとSDGs~タイのSDGs事情とともに~

2015年、国連サミットで採択された「2030年までに達成を目指す17の目標」=SDGs。日本ではつい環境問題ばかりに注目が集まりがちですが、実は貧困や飢餓、パートナーシップやジェンダー、エネルギーに経済活動まで、持続可能でよりよい世界を目指す国際指標は多岐にわたります。日本も目標を達成するために様々な取り組みが行われていますが、他国の状況も気になるところですよね。

そこで今回は、アバイブーベ本部があるタイや、私たちアバイブーベが行っている持続可能な社会を築くための取り組みについ<てご紹介します。

-目次-

・タイのSDGs達成率東南アジア第一位!

2016年から毎年発表されている、SDGsの達成度・進捗状況に関する国際レポートSustainable Development Report (持続可能な開発レポート)には、17の目標達成度を100点満点で採点した場合の国別順位と、SDGsの目標別の順位・推移が記載されています。

2021年に発行されたレポートを見てみると、タイは74.19ポイントで43位。東南アジアの中では1位の達成率となっており、タイのSDGsの取り組みは東南アジアの中では最も先進的であると評価されています。

国の豊かさを示すと言われている一人当たりのGDPは、シンガポールやマレーシアに及ばないタイが、何故SDGsの達成率では1位なのでしょうか?その秘密を探っていきましょう。

17のゴールと169のターゲットの達成状況がスコア化され、1年に1度発表されている

・秘密は「足るを知る」の精神にあり?

タイのSDGs達成率が高水準である理由の一つが、Sufficiency Economy Philosophy=「足るを知る経済」が浸透していることだといわれています。これは、前国王であるラーマ9世が、1997年に起きたアジア通貨危機の反省を踏まえて提唱した経済指針なのですが、一体どのようなものなのでしょうか?

足るを知る経済とは、

”「消費過多によって豊かさが図られる近代的成長」という考えと「最小限の消費で最大限の幸福を得る伝統への停滞」という考えの二者択一を迫るものではなく、仏教的な「中道」の考えを基盤とした、コミュニティから政府のすべてのレベルにあてた指針である。ひとりひとりが執着を離れ、正しい判断をして行動をすることで、国外からや国内における様々な衝撃に対してうまく対応することを可能とする。”

出典:羽間 久美子 2020-03-31 タイにおける持続可能社会への実践と展望 : Sufficiency Economy Philosophyに基づいた教育がどのように若者の意識を変えたのか
https://kwansei.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=28720&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

という考え方です。「足るを知る経済」の基盤となった仏教の「中道」とは、「対立または矛盾しあう両極端の立場を離れ、両極端のどれにも偏らない中正な立場を貫くこと」。ブッタが苦行中に、楽に流されることだけでなく、極端にがんばりすぎることも戒めたことが由来となっています。貪欲に利益や物、食べ物を求めることで過剰になることを避け、程よい程度の利益や物、食べ物を求めることが、自分自身や世の中の幸せにつながっていくという思いが込められています。

タイでは「足るを知る経済」に基づいて、様々な取り組みがなされてきました。タイ国内は貧富の差が激しく、貪欲に求めて多くのものを手にする人がいれば、求める気力も出ないほどの貧困にあえぐ人もいます。前国王は一人でも多くの国民が均等に「足るを知る」ことができるよう、貧困地域を中心に様々なロイヤルプロジェクトを立ち上げ、一人でも多くの人が自立出来るようにサポートしてきました。(ロイヤルプロジェクトについては、後程詳しくご紹介します)

その取り組みを国連機関が見逃すはずはなく、2007年には「足るを知る経済」と持続可能な開発や人間開発との共通点があるとのレポート(※)が発表されています。タイでは、国連でSDGsが制定される前から、 ラーマ9世と共に持続可能な社会を目指し、取り組んでいました。だからこそ、タイがSDGsのスコアが東南アジアの中で第1位をキープできているのです。

※ UNITED NATIONS DEVELOPMENT PROGRAMME Thailand Human Development Report 2007
https://hdr.undp.org/en/content/thailand-human-development-report-2007
ちなみに、ラーマ9世の肖像が描かれていた旧千バーツ紙幣の裏面に「足るを知る経済とは、経済がほどよく持ち、ほどよく食する様であり、このようにほどよく持ち、ほどよく食することが自己の維持となり、自身にも十分と思わせることである」との文言が付されていました。

紙幣裏側に「知るに足る」の精神が書かれている

・負の連鎖を断ち切るために誕生したロイヤルプロジェクト

前国王ラーマ9世による「国民一人一人が自立した生活が長く送れるよう、様々な角度から支援を行うこと」を目的とした「ロイヤルプロジェクト」。その歴史は古く、1969年までさかのぼります。

当時、ラーマ9世がタイ北部の山岳地帯(ゴールデントライアングル)に住む山岳民族が、生計のために栽培していたケシが麻薬の原料となり、中毒者が増加してしまっていること、そして、焼畑農業による環境破壊に心を痛め、彼らの救済のために代替農業を提案しました。ケシを育てる以上に安定した収入が見込めるコーヒーや果物の栽培を促進し、知識に長けた王族をその場に住まわせて農家を指導することで、安定した生産を可能にしただけでなく、タイ全土にコーヒーショップを開いて消費に繋げ、ケシに頼らない持続可能な社会を作り出しました。その結果、ケシ栽培は99.9%撲滅することができ、現在に至るまで森林保護や山岳民族の自立支援と健康を守ることを実現したのです。

ケシの代替え農業として定着したコーヒー

山岳民族を負の連鎖から救い出すだけでなく、自立した後も安定した収入が得られる道筋をつくることを目的としてスタートしたロイヤルプロジェクトですが、現在はなんと3000以上のプロジェクトが進行しています。

スタート当初の理念だった少数民族の生活向上や、地域格差の解消、焼き畑農法に代わる持続可能な循環型農業の普及だけでなく、水資源や環境、公衆衛生などその活動は多岐にわたっています。いずれも単なる援助ではなく、プロジェクトに参加する人々が、「持続可能な経済活動を行える環境を整えて、継続的に実践できること」を目的としています。そのため、一過性のものではなく、長期にわたるサポートが行われているのが、ロイヤルプロジェクトならではの特徴といえるでしょう。

現在では、バンコク市内や空港に「ロイヤルプロジェクトショップ」がオープンし、プロジェクトを通じて商品化された様々なアイテムを手軽に手に入れることができます。売り上げは当然ながら生産者へ還元されています。ロイヤルプロジェクトは、商品を作ったら終わりではありません。流通先までを整えることで、国民の生活が継続して安定する仕組みも作り出しているのです。

・アバイブーベが考え、実践する持続可能な社会とは

では、ロイヤルプロジェクトの一つであるアバイブーベではどのような取り組みが行われているのでしょうか?

アバイブーベでは、地元のハーブ農家の人々と共に年間の計画を立てて、様々な種類のハーブを育てています。ハーブは植物ですので、その時の気候によって収穫の量が左右されますが、農家の方の収入が変動することはありません。不作の場合でも、生活が苦しくなることがないよう、毎年農家の方が納得できる報酬で契約をしています。さらに、ハーブを育てるにあたっての最新の知見を共有し、安心して高品質のハーブを育てられる環境を、共に作り上げています。

その土地に合った作物をより自然に近い状態で育て、収穫する為の研究が常に行われている

また、ラーマ9世によって始められた国家農業支援プロジェクトの一環である「アバイブーベのハーブ農場」は、単一の薬草を整列させて植える農場ではありません。多種多様な薬草を雑木林のように植える「ワイルドクラフト農法」で、自然に負担をかけずにハーブを育て、収穫しています。さらに、40hの農場の周りに500m幅の緩衝ベルト地帯を設け、他の地域からの飛散物を防ぐなど、土や植物にとって最適な環境を守るための徹底した対策を行い、自然の姿により近い最高品質のハーブを生産しています。

自然に近い状態でハーブを育てることで、ハーブが持つ力を最大限生かすことができる

さらに、アバイブーベではハーブを過剰に作りすぎることはありません。農薬や肥料を使って二毛・三毛作などを行わず、ハーブの成長サイクルに負担をかけずに育てています。収穫の際も、機械を使わず手摘みで行い、その時に必要な分だけを摘み取ります。これは、アバイブーベがラーマ9世の理念である「足るを知る」経営を実直に実践しているからこそ。

過剰な収穫をせず、必要な分だけを育て、必要な分だけ収穫する

収穫されたハーブは、タイの製薬基準の元で製品化され、併設の病院で地元の人々の治療のために用いられるほか、タイ国民の健康維持に役立つよう、地元の薬局やコンビニなどで手軽に買えるような流通施策が取られています。

アバイブーベ病院併設の薬局には、毎日多くの人々が訪れる

そして、得られた利益は農家の人々と分配し、再び貧困や飢餓に陥らないように共に歩んでいく。このようなサイクルを生み出すことにより、決して豊かとはいえない地方都市でも、環境を破壊することなく、充足した経済活動が持続できるコミュニティを作り続けています。

地元の農家の人々と共にハーブを丁寧に選別する

・アバイブーベが目指す未来

ここまでご紹介したアバイブーベの取り組みは、今や世界各国の「自立する農業」の手本とさえいわれているほど、注目を集めています。

環境を破壊することなく、作りすぎず、過剰な利益を求めず、得た利益は人々に適切に分配することで「足る」=充足した生活を未来へと継承する。これは、SDGsが制定される遥か昔から、ロイヤルプロジェクトと共に歩み続けるアバイブーベが、当たり前のように行ってきたものであり、そして未来へとつなげていく取り組みです。

SDGsのゴールは2030年。果たしてどのような未来が待っているのでしょうか?アバイブーベが実現した持続可能な「自立する農業」が、重い扉を開けるきっかけの一つになってくれることを願ってやみません。

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