健康はハーブで作る!タイの伝統医学に学ぶ健康の知恵  ー第5回 タイ伝統医療と中医学の深い関わりって?ー

タイの伝統医学についてお伝えする「健康はハーブで作る!タイの伝統医学に学ぶ健康の知恵」の第5回。

前回、タイでは西洋医学と伝統医学が共存している理由についてお話しました。互いの利点を生かしながら、共存していくことでタイの人々の健康を支えている西洋医学と伝統医学ですが、ここでもう一つ忘れてはならないのが「中医学」の存在。タイでは東洋医学をどのようにとらえ、タイの伝統医学とどのようにかかわってきたのでしょう?

今回は、タイ伝統医学と中医学の関わりについて、「4タート理論」と「五行説」の違いなどを解説しながら、その関係性についてわかりやすくご紹介します。

 

 

-目次-

①東洋医学としての、タイ伝統医学と中医学とは?

タイ伝統医学と東洋医学のルーツを語る前に、東洋医学の定義からお話していきましょう。

日本では、「東洋医学=中医学や漢方、鍼灸、整体」といったイメージがありますが、実はちょっと違うのです。そもそも、東洋医学とは、2つのとらえ方があるのです。

1つ目は、広義の意味でとらえる東洋医学。「東洋」とは「トルコ以東のアジア諸国」のことで、中東地域や中央アジア諸国も含む広大な地域を指します。この広大な地域には、大きく分けて3つの伝統医学が生まれました。一つ目はインドの伝統医学であるアーユルヴェーダ、2つ目はイランを中心とした中東地域にはユナニ医学、そして、3つ目は中国における中医学で、世界三大医学とも呼ばれています。

これら三つの医学は、互いに影響をしあいながら発展し、様々な地域に伝承されていきました。例えば、アーユルヴェーダはタイに伝承し、タイ伝統医学として、中医学は日本に伝承し、漢方や鍼灸といった形で、それぞれの国で独自に発展を遂げていったのです。

広義の意味での東洋医学とは、アーユルヴェーダや、タイ伝統医学、ユナニ医学、中医学、日本の漢方医学など全てを含んだ総称といえるでしょう。

2つ目は、狭義の意味でとらえる東洋医学。中医学が誕生した中国では東洋とは、日本の事を指します。そのため、狭義の東洋医学は、日本に伝来した中医学に影響を受けながら発展した、漢方医学=日本伝統医学の事を指します。

これは余談ですが、タイ伝統医学のベースとなったアーユルヴェーダが仏教と共に伝来したように、漢方医学は、明の時代から中国大陸へ留学した僧医が持ち帰ったものが、日本で発展を遂げたもの。どちらも仏教が深くかかわっているのですね。

②「4タート理論」と「五行説」の違いって?

突然ですが、タイ伝統医療の基礎理論である「4タート理論」をご存知でしょうか?

4タート理論とは、アーユルヴェーダにも共通する理論で、「土」「水」「風」「火」の4つの組み合わせで宇宙や人の身体が成り立っているという考え方。「タート」とは、タイ語で元素を表します。タイ伝統医学では、この4つのタートのバランスが崩れると、病気になるとされていて、患者の体質や、病気の種類、症状に合わせて、弱すぎたり強すぎたりするタートを調整するハーブを処方していきます。4つのタートが持つ意味については、次回詳しくご紹介しますね。

中医学では、「五行説」と「陰陽説」を組み合わせた「陰陽五行説」に基づいた治療をしています。万物は木と火(陽)、金と水(陰)、土(陰陽の中間)の5種類の元素からなるという説で、「4タート理論」と同様に、五行のバランスが崩れると病気になると考えます。「4タート理論」と同じようなイメージを抱く方多いと思いますが、タイ伝統医学では「陰陽説」にあたる考え方はありません。

これは推測の範囲となりますが、タイの伝統医学に陰陽説のような概念が必要ない理由は、気候が大きく関係していると思われます。タイは、亜熱帯気候で、常に気温は高め。乾季・暑季・雨季がありますが、極端に寒い日は滅多にありません。

中国は、四季があり、寒暖の差が激しいため、季節ごとの対応が必要となります。そのたえめ、春・夏を「陽」に分類し、秋・冬を「陰」に分類する陰陽説が必要だったのではないでしょうか。

ちなみに、中医学におけるツボや気にあたるものは、タイ伝統医学でも存在します。それは、「10セン理論」。センはタイ語でラインの意味を持ちます。タイの伝統医学において、人間の身体には72,000本の生命エネルギーの通り道があるといわれているのですが、その中の10本の主要なラインに働きかけて、身体の生命エネルギーの流れの滞りを改善して、4タートのバランスを整えることで病気を改善するというもの。

タイ伝統医学のマッサージにおいて欠かせないとても重要な理論で、10本のセンをほぐしたり伸ばしたりすることで、タートを整え、病気の治療に役立てたり、未病予防をしているんですね。

③タイにおけるタイ伝統医学と中医学の存在

タイは、タイ族、華人、マレー系、インド系その他の少数民族で構成される多民族国家。タイ族が8割程度、華人が1割程度といわれていますが、混血化が進み、華人の血を引くタイ人が非常に多く、中国人の子孫でない人を探すのは難しいとさえいわれるほど。

そもそも、スコータイ王朝時代以前から華人の商人が渡来するなど、中国との交流は古く、今でも中国の風習が色濃く残る地域もあります。そのため、インドからもたらされたタイ伝統医学も、アーユルヴェーダの知識だけでなく、華人より伝来した中医学を取り込みながら、独自の形へと発展した経緯もあり、どちらも常に身近なものとして存在してきました。例えば、肩こりや腰痛の治療のために、鍼灸の治療を受けたり、腹痛や頭痛がするときはハーブを処方したりと、症状や体質に合わせて生活の中に上手に取り入れています。

タイでは、一部の都市部を除いて、まだまだ病院の敷居を高く感じる方が多いのが現状です。そのため、病院に行かずとも、身近なハーブやマッサージで体調を整えられるタイ伝統医学や、中医学の智慧は欠かせないものとなっています。いにしえの時代から現在まで、庶民の健康を支える医療として人々を支え続けているんですね。

現在ではタイ政府も、身近なハーブで健康を維持することができ、未病予防としても大きな効果が期待できるタイ伝統医学の価値を見直すとともに、伝統医学の復興を推進しています。伝統医学におけるハーブの薬効に対するエビデンスも増え続けており、化学的にも確立された医学として進化を続けています。

今回は、タイ伝統医学と中医学の関わりをご紹介しました。非常に奥深い世界であるタイ伝統医療。今後も月1回のペースで角度を変えてご紹介していきますので、お楽しみに。

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